得度とは ― 意味、出家との違い、得度でできること
得度(とくど)とは、師僧から僧名(戒名)を授かり、戒を受けて仏弟子となる儀式のことです。仏門に入る最初の関門であり、「僧侶としての歩みが始まる日」と言い換えることもできます。ただし、得度を受けた時点で葬儀や法要を勤められるわけではありません。得度は入口であり、その先に修行(真言宗では四度加行)と伝法灌頂があります。このページでは、得度の意味、出家との違い、そして得度でできること・できないことを、できるだけ正確にお伝えします。
得度の意味 ― 「度」は彼岸へ渡ること
「得度」の「度」は、サンスクリット語のパーラミター(波羅蜜)に由来する「渡る」「渡す」という意味の語です。迷いの此岸から悟りの彼岸へ渡ること、すなわち「度を得る」ことが語の本来の意味です。そこから転じて、仏門に入り僧侶としての第一歩を踏み出す儀式そのものを「得度」と呼ぶようになりました。
歴史的には、日本では律令制の下で得度は国家の管理下にあり、官の許可を得て出家することを指していました。許可を得ずに出家した者は「私度僧」と呼ばれ、制度上は認められない存在でした。時代が下るにつれて得度は各宗派・各寺院の内部の儀式として整えられ、現代では宗派ごとに定められた作法によって師僧が弟子に授けるものとなっています。
真言宗において得度は、師僧が弟子の髪を剃り(剃髪)、戒を授け、僧名を与える儀式です。この三つが揃って、その人は「仏弟子」として認められます。剃髪は本来、世俗への執着を断つ象徴ですが、現代では仕事を続けながら修行する方も多く、有髪のまま得度を受けられる道場もあります。当道場もその一つです。
得度と出家の違い
「得度」と「出家」はしばしば同じ意味で使われますが、厳密には重なりつつも異なる言葉です。
出家とは、文字通り「家を出る」こと、すなわち世俗の生活を離れて仏道に専念する生き方を指します。生き方・身分の転換という広い概念です。一方、得度はその出家を正式なものとして認める「儀式」です。言い換えれば、出家という生き方の入口に置かれた関門が得度であり、得度を受けることで出家が制度上・教団上の事実として成立します。
ただし現代日本では、得度を受けても世俗の生活をすべて離れるわけではない方が大半です。会社に勤め、家庭を持ち、その上で僧侶としての歩みを続ける――そうした在り方が広く受け入れられています。このため、「得度は受けたが、いわゆる出家(世捨て)はしていない」という状態は珍しくありません。語の整理としては、次のようにお考えいただくと分かりやすいでしょう。
| 言葉 | 意味 | 性質 |
|---|---|---|
| 出家 | 世俗を離れ仏道に生きること | 生き方・身分 |
| 得度 | 師僧から僧名と戒を授かる儀式 | 儀式・関門 |
| 授戒 | 戒を授かること(得度の中核) | 儀式の一部 |
| 在家 | 出家せず世俗で仏道を歩むこと | 生き方・身分 |
当道場では、得度と同時に十善戒を授けるため「得度・授戒」と並べて表記しています。
得度で授かるもの
得度式で授かる主なものは次の三つです。
- 僧名(戒名):師僧から与えられる仏弟子としての名です。生前に授かる戒名であり、多くの場合、以後の僧侶活動でこの名を名乗ります。当道場では「僧名」と呼び、戒名と同じ意味で用います。
- 戒:仏弟子として守るべき行動の指針です。真言宗では十善戒(じゅうぜんかい)を授かります。身・口・意にわたる十の戒めで、生き方の軸となるものです。
- 師僧との縁:得度によって師と弟子の関係が結ばれます。これは一度きりの手続きではなく、以後の修行と活動を通じて続いていく関係です。
得度でできること、できないこと
ここが最も誤解の多いところです。得度は僧侶への入口ですが、得度を受けただけで僧侶としての活動がすべてできるようになるわけではありません。
得度を受けてできること
– 仏弟子として僧名を授かり、戒を受けた者として生きること
– 日々の勤行を僧名のもとで続けること
– 宗派や所属先の定めに従い、さらに上の修行へ進む資格を得ること
得度だけではできないこと(一般に)
– 葬儀・法要・祈願を導師として自ら勤めること
– 教師資格・阿闍梨位・住職資格を名乗ること
– 伝法灌頂を経た者にのみ許される作法を行うこと
真言宗では、僧侶として人のために葬儀・法要・祈願を勤めるには、得度の後に四度加行(十八道・金剛界・胎蔵界・護摩の四つの行法)を満行し、伝法灌頂を受けて阿闍梨となることが必要です。得度はその出発点であり、終着点ではないということを、どうかはじめに知っておいてください。
なお、僧籍(宗派や寺院における僧侶としての登録)や教師資格は、いずれも宗教法人の内部制度です。国家資格のように法律で一律に定められているものではなく、どの宗派・本山・寺院で、どの段階まで修めたかによって、通用する範囲が決まります。詳しくは僧侶の資格の種類と、どこで通用するかをご覧ください。
当道場の場合
心照寺 春日部道場では、得度を次の二通りの形でお受けしています。
得度・授戒のみ:戒名(僧名)と十善戒を授かる課程です。正式申込みから得度式まで百日をかけ、毎朝の勤行、志望理由書の提出、三回の事前講座、本面談を経て得度式に臨みます。得度後は6か月の見習い期間を経て度牒交付・僧籍登録となります。この課程では僧侶として葬儀・法要を勤めることはできませんが、仏弟子として戒を保ち、僧名のもとに生きる道が開かれます。
得度して修行に進む(四度加行コース):僧侶資格(真言宗教師・阿闍梨)を目指す課程です。面談で入門が決まればすぐに得度式を行い、四度加行へ進みます。得度から阿闍梨まで、仕事を続けながら通常6〜8か月です。百日の流れはこの課程には適用されません。
いずれの場合も、得度式は春日部の道場で行います。剃髪が基本ですが、仕事を続ける方が多いため有髪のまま得度を受けることができます。男女を問わず、年齢の上限もありません。得度式で授かる僧名と十善戒は、どちらの課程でも同じ重みを持つものです。
得度を受けるとは、「これからどう生きるか」を一つの名のもとに引き受けることでもあります。後悔のない生き方を考えたとき、得度という関門は、その問いに静かに向き合う機会になり得ます。
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このページの要点
- 得度とは、師僧から僧名と戒を授かり仏弟子となる儀式。「出家」が生き方を指すのに対し、得度はその入口の儀式。
- 得度だけでは葬儀・法要・祈願を勤めることはできず、真言宗では四度加行と伝法灌頂が必要。
- 当道場では「得度・授戒のみ(百日)」と「得度して修行に進む」の二通りで得度をお受けしている。
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