在家得度と出家得度の違い、当道場の二通りの得度
「在家得度」と「出家得度」は、法律や宗派の規則で厳密に定義された用語ではありませんが、一般に、世俗の生活を続けながら得度を受けることを在家得度、世俗を離れ僧侶として生きるために得度を受けることを出家得度と呼び分けています。当道場の「得度・授戒のみ」は前者に近く、「得度して修行に進む」は、仕事を続けながらであっても僧侶資格(阿闍梨)を目指す点で後者の性格を持ちます。このページでは、二つの言葉の違いと、当道場の二通りの得度の関係を整理します。
在家と出家 ― もともとの意味
仏教では、仏道を歩む人を「出家」と「在家」の二つに分けてきました。出家は、家を出て世俗の生活を離れ、修行に専念する人々、すなわち僧侶です。在家は、家にとどまり、家庭や仕事を持ちながら仏法に帰依する人々、すなわち信徒です。
本来、得度は出家の儀式でした。得度を受けるということは、出家者の側に移ることを意味していました。しかし、日本の仏教では歴史の中で僧侶の在り方が変わり、現代では家庭を持ち、俗世の仕事を持つ僧侶が広く認められています。その結果、「得度を受けたが世俗の生活は続けている」という状態が一般的になり、それを指す言葉として「在家得度」という表現が使われるようになりました。
在家得度と出家得度の違い
厳密な定義がないことを前提に、一般的な使われ方を整理すると次のようになります。
| 在家得度 | 出家得度 | |
|---|---|---|
| 目的 | 戒を受け、仏弟子として生きる。信仰を正式な形にする | 僧侶として法要・祈願などを勤めることを目指す |
| 生活 | 世俗の生活を続ける | 本来は世俗を離れるが、現代では仕事を続ける場合も多い |
| 得度後 | 僧名と戒を保ち、勤行を続ける | 宗派の定める修行(真言宗では四度加行)に進む |
| 到達点 | 得度・授戒そのもの | 伝法灌頂を経て阿闍梨、教師資格、住職資格 |
| 法要を勤める | できない(一般に) | 修行を満行し資格を得れば勤められる |
重要なのは、「在家か出家か」という区分は、髪を剃るか剃らないか、仕事を続けるか辞めるかで決まるものではない、ということです。それよりも、得度の後にどこまで進むのか、僧侶としてどこまでの務めを担うのか、という「目指すもの」の違いとして捉えるほうが、現代では実態に合っています。
「在家の僧侶」という在り方
現代日本では、仕事を持ちながら僧侶として活動する方は珍しくありません。寺に生まれて住職を継ぎながら教員や会社員として勤める方もいれば、在家から僧侶になり、平日は仕事、週末は法要という方もいます。真言宗を含む多くの宗派で、僧侶に独身や無職が求められるわけではありません。
したがって、「仕事を辞めなければ本当の僧侶にはなれない」というのは誤解です。問われるのは、生活の形ではなく、定められた修行を修め、資格を得て、戒を保って務めを果たしているかどうかです。詳しくは社会人が働きながら僧侶になるにはと僧侶の資格の種類と、どこで通用するかをご覧ください。
当道場の場合
当道場では、得度を二通りの形でお受けしています。この二つを、在家得度・出家得度の区分に当てはめると、次のようになります。
得度・授戒のみ ― 在家得度に当たる課程
戒名(僧名)と十善戒を授かることを目的とした課程です。正式申込みから得度式まで百日をかけ、毎朝の勤行、志望理由書、三回の事前講座、本面談を経て得度式に臨みます。得度後は6か月の見習い期間を経て度牒交付・僧籍登録となります。
この課程では、僧侶として葬儀・法要・祈願を勤めることはできません。見習い期間中の名乗りは「心照寺得度者」までで、「僧侶」の肩書は使えません。仏弟子として戒を保ち、僧名のもとに自分の生き方を整えたい方、仏縁を正式な形にしたい方のための課程です。詳しくは得度のご案内と得度だけを受けたい方へをご覧ください。
得度して修行に進む ― 僧侶資格を目指す課程
僧侶資格(真言宗教師・阿闍梨)を目指す課程です。面談で入門が決まればすぐに得度式を行い、四度加行(十八道・金剛界・胎蔵界・護摩)に進みます。四度加行を満行し、伝法灌頂を受けて阿闍梨となり、僧籍は伝法灌頂の後に心照寺で預かります。得度から阿闍梨まで、仕事を続けながら通常6〜8か月です。
この課程は、目指すものの点では出家得度の性格を持ちますが、生活の形としては在家のままです。当道場の修行者は全員が寺との縁のない在家の社会人で、大半が仕事を続けながら修行しています。剃髪が基本ですが有髪のまま修行できます。全体の流れは申込みから阿闍梨までの全体の流れ、費用は費用一覧をご覧ください。
二つの課程の関係
| 得度・授戒のみ | 得度して修行に進む | |
|---|---|---|
| 一般的な区分 | 在家得度 | 出家得度(僧侶資格を目指す) |
| 得度式まで | 百日 | 面談で入門が決まればすぐ |
| 得度式で授かるもの | 僧名・十善戒 | 僧名・十善戒(同じ) |
| 得度後 | 見習い期間6か月→度牒・僧籍登録 | 四度加行→伝法灌頂(通常6〜8か月) |
| 法要を勤める | できない | 伝法灌頂後にできる |
| 費用 | 冥加金10万円+法衣類 | 総額約85万円 |
得度式で授かる僧名と十善戒は、どちらの課程でも同じものです。違うのは、得度の後にどこへ向かうかです。百日の途中で修行の道に進みたくなった場合は、残りの期間を待たずに得度式を行い、四度加行に入ることができます。得度のみを終えた後に修行へ進むことも可能です。その場合、見習い期間中でも僧籍登録後でも、口頭でお申し出いただければ足ります。得度・授戒式の冥加金10万円は既に納めたものとみなし、二重にはかかりません。必要になるのは四度加行45万円、その他の行法10万円、そして支度金の差額(法衣を購入済みであれば教本・次第書類の約5万円のみ。レンタルであった場合は法衣類の約15万円も加わります)です。
どちらを選ぶか
「法要を勤めたいのか、戒を保って生きたいのか」――この問いが、二つの課程を分ける一番の目安です。
看護・介護の仕事で、亡くなる方やご遺族に祈りを届けたい。占い師として、必要な供養を自分で行いたい。遺品整理の仕事で御霊抜きを自分で行いたい。定年後を僧侶として生きたい。こうした動機をお持ちの方は、法要・祈願を自ら勤めることになりますので、得度して修行に進む課程が合っています。
一方、今は仕事や家庭を中心に生きながら、仏弟子としての名と戒を授かり、毎朝の勤行を本物にしたい、という方には、得度・授戒のみの課程が合っています。
どちらが上でどちらが下ということではありません。自分がどう生きたいかに正直に選ぶことが、後悔のない選択につながります。迷われる場合は、オンライン説明の場でご相談ください。
関連する問い
- 得度とは ― 意味、出家との違い、得度でできること 得度とは / 得度のご案内 得度のご案内 / 得度だけを受けたい方へ 得度だけを受けたい方へ / 申込みから阿闍梨までの全体の流れ 申込みから阿闍梨までの全体の流れ / 社会人が働きながら僧侶になるには 社会人が働きながら僧侶になるには / 僧侶の資格の種類と、どこで通用するか 僧侶の資格の種類と、どこで通用するか
このページの要点
- 在家得度・出家得度は厳密な定義のない区分で、生活の形よりも「得度の後にどこまで進むか」の違いとして捉えるのが実態に合う。
- 当道場の「得度・授戒のみ」は在家得度に当たり、「得度して修行に進む」は仕事を続けながら僧侶資格(阿闍梨)を目指す課程。
- 得度式で授かる僧名と十善戒はどちらも同じ。法要を勤めたいかどうかが、選ぶ目安になる。
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