僧侶に向いている人、入門する人の動機
僧侶に向いているのは、特別な才能や信仰歴のある人ではありません。毎日の小さな実践を続けられる人、人の死と悲しみから目を逸らさない人、そして僧名と肩書を自分のためでなく人のために使おうとする人です。当道場に入門する方の動機は大きく五つに分かれ、職業として僧侶を目指す方、看護・介護・医療の仕事に活かしたい方、占いの実践者として供養を自分で行いたい方、遺品整理などの仕事で御霊抜きを自分で行いたい方、定年後を僧侶として生きたい方です。全員が寺との縁のない在家の社会人で、年齢層は30代から70代にわたります。
僧侶に向いている人とは ― 三つの資質
「自分は僧侶に向いているだろうか」という問いは、入門を考える方のほとんどが一度は抱くものです。お寺の生まれでもなく、仏教を学んだこともなく、信心深いと言えるほどの信仰もない。そういう方が「自分には資格がないのではないか」と感じるのは自然なことです。
しかし、私どもが修行者を見てきて感じる「向いている人」の資質は、生まれや学歴や信仰歴とはあまり関係がありません。次の三つです。
毎日の小さな実践を続けられること
真言宗の修行は、印を結び、真言を唱え、観想を行う作法を身体に染み込ませることから始まります。これは一度に覚えるものではなく、毎日繰り返すことで初めて身につきます。得度のみの課程でも、百日間、毎朝十分ほどの勤行を欠かさず続けていただきます。
才気に溢れていても三日で止まる人より、不器用でも毎朝続ける人のほうが、確実に僧侶になります。「続けられるかどうか」が、才能や知識よりはるかに大きな分かれ目です。
人の死と悲しみから目を逸らさないこと
僧侶が対面するのは、多くの場合、人が亡くなった後です。葬儀・法要で、遺されたご家族の悲しみの前に立ち、引導を渡し、供養を勤めます。死を忌むのではなく、死と向き合う人のそばに立ち続けることができるか。これは僧侶という道の中心にある問いです。
看護師・介護士・医師など、仕事で日常的に死と向き合っている方が当道場に多く入門されるのは、この資質を既にお持ちだからだと感じています。
僧名と肩書を人のために使おうとすること
得度で授かる僧名と「僧侶」という肩書には、社会的な重みがあります。それを営業や勧誘の道具として使おうとする方は、当道場ではお受けできません。得度の前には、僧名と肩書の使い方を定めた行動規範に署名していただきます。
「僧侶になって何をしたいか」と同じくらい、「僧侶の名で何をしないか」を自分に問える人。それが向いている人だと考えています。得度のみの課程で提出していただく志望理由書には、この「僧侶の名で何をしないか」という問いが含まれています。
僧侶になりたい理由 ― 実際の入門者の五つの動機
当道場に入門される方の動機は、おおよそ次の五つに分かれます。どれが正しいということはなく、複数が重なっている方も少なくありません。
職業として僧侶を目指す
葬儀・法要を勤める僧侶として生計を立てたい、という動機です。寺の跡継ぎではない方が職業として僧侶を目指す道は、以前に比べれば開かれてきました。修了者の中には、葬儀社や僧侶派遣への登録などで活動を始めた方、自宅の一室を寺として開寺した方がいます。
ただし、僧侶の収入は安定しているとは限らず、活動の場を自ら作る必要があります。当道場では修了後も、僧侶活動の相談、自宅の一室を寺として採算に乗せる方法、布教活動の支援などを行っています。この道を選ぶ方には、理想と現実の両方をお伝えするようにしています。
看護・介護・医療の仕事に活かす
看護師、介護士、医師として、日々患者さんや利用者さんの死に接する中で、「自分にできることはもっとあるのではないか」と感じて入門される方です。
亡くなった方に手を合わせるとき、ご家族に声をかけるとき、僧侶としての作法と心構えがあれば、医療者としての関わりがより深くなります。この方々の多くは職場を辞めることなく、今の仕事の中で僧侶であることを活かしています。
占いの実践者として、必要な供養を自分で行う
占い師として相談を受ける中で、ご先祖の供養や、亡くなった方への回向が必要だと感じる場面があります。これまではお寺を紹介するしかなかったものを、自分自身で正式に勤められるようになりたい、という動機です。
ここで大切なのは、「供養ができる」と名乗るには、得度だけでは足りないという点です。葬儀・法要・祈願を自ら勤めるには、四度加行を満行し、伝法灌頂を受けることが必要です。占い師の方には、この区別を特に丁寧にお伝えしています。
遺品整理・産廃業の仕事で御霊抜きを自分で行う
遺品整理や不用品回収の現場では、仏壇や位牌、神棚などの御霊抜き(魂抜き)を求められることがあります。そのたびに外部の僧侶に依頼するのではなく、自分が僧侶として勤められるようになりたい、という動機です。
仕事に直結した実務的な動機ですが、御霊抜きを勤めるということは、その家の故人とご家族の思いを引き受けることでもあります。実務から入って、供養の意味を深く考えるようになった方を、私どもは見てきました。
定年後を僧侶として生きる
50代・60代で、仕事の区切りが見えてきたとき、「残りの人生をどう生きるか」を考えて入門される方です。当道場の修行者は50代が最も多く、次いで60代、40代と続きます。定年後に僧侶として活動することを目指し、在職中に修行を終えておく方も多くいらっしゃいます。
この動機の方には、主管の康照自身が50歳で市議会議員を引退し、その後の生き方を考えて僧侶の道に入った経緯をお話しすることがあります。社会での役割を一通り果たした後に、何を残し、誰のために生きるのか。その問いへの一つの答えが僧侶という道です。
年齢・職業・知識は問われるか
年齢
年齢の上限はありません。当道場の修行者は30代から70代にわたります。体力を要する合宿修行ではなく、自宅での実践と個別指導が中心ですので、年齢が理由で続けられないということは、まずありません。
職業
修行者の職業は、会社員、医師、看護師、介護士、経営者、自営業、占い師、フリーター、主婦などさまざまです。大半が仕事を続けながら修行しています。職業によって入門の可否が変わることはありません。
仏教の知識
入門時に仏教の知識は問いません。全員が寺との縁のない在家の社会人として入門しています。教相(教理)は修行の中で、日本仏教史、真言密教の概説、空海の著作、大日経・金剛頂経などを順に学んでいただきます。
性別
男女を問いません。女性の修行者もいらっしゃいます。
当道場の場合 ― 動機をどう見るか
当道場では、入門前にオンラインでの説明と面談を行います。面談では住民票・履歴書・身元保証書をお持ちいただき、お話を伺います。この面談は「ふるい落とす」ためのものではなく、人物面に問題がなければ入門を許可しています。
お受けできないのは、僧名や肩書を営業・勧誘に使う目的の方、提出物に虚偽がある方、行動規範に同意いただけない方、暴力団その他の反社会的勢力に属する方・その関係者です。
動機そのものに優劣はつけません。「職業として」という動機も、「仕事に活かす」という動機も、「定年後の生き方として」という動機も、それぞれに尊いものです。ただ、どの動機であっても、僧名と肩書を人のために使う覚悟があるかどうかは、面談の中でお伺いします。
得度のみの課程では、申込みから30日目までに、手書きの志望理由書を郵送していただきます。問いは四つ、「得度を望む理由」「仏縁の経緯」「得度後にすること」「僧侶の名で何をしないか」です。自分の動機を自分の手で書き出すことは、それ自体が入門の一部だと考えています。
「向いていないかもしれない」と感じている方へ
ここまで読んで、「自分は三つの資質のどれも自信がない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。それは、向いていないということではなく、誠実に自分を見ているということです。
実際に入門される方の多くも、最初は同じ不安を抱えています。毎日続けられるかどうかは、始めてみなければわかりません。死と向き合えるかどうかも、修行の中で少しずつ育っていくものです。
後悔のない生き方とは、迷いが消えてから動くことではなく、迷いを抱えたまま、それでも今日の一歩を踏み出すことだと、私どもは考えています。向いているかどうかを一人で判断する前に、一度お話を伺わせてください。
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このページの要点
- 僧侶に向いているのは、毎日の実践を続けられる人、死と悲しみから目を逸らさない人、僧名と肩書を人のために使う人。生まれ・学歴・信仰歴は問われない。
- 当道場の入門者の動機は、職業として/看護・介護・医療に活かす/供養を自分で/御霊抜きを自分で/定年後の生き方、の五つに大別される。
- 年齢上限なし、男女不問、仏教の知識不要。全員が寺と縁のない在家の社会人で、大半が仕事を続けながら修行している。
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